オフィスの運営において、LANや電話、電気供給などに使用される多種多様な配線ケーブルは不可欠です。しかし、レイアウトの変更や機器の増設を重ねるうちに、これらの配線は次第に複雑化し、乱雑になりがちです。

具体的には、以下のような状況が挙げられます。

・床や机周りにケーブルが絡まり合っている
・コンピュータの背面などがケーブルで乱雑になっている
・どのケーブルがどの機器に接続されているか判別できない
・人が通行する場所にケーブルが剥き出しになっている
・ケーブルやその周辺にホコリが蓄積している

このような状態を放置すると、様々なリスクや問題につながる可能性があります。

デメリット①職場環境への影響
整理されていない配線は、オフィス全体の印象を損なう一因となります。

デメリット②安全性の低下
床に散乱したケーブルは、つまずきや転倒事故を誘発し、従業員の怪我につながる危険があります。

デメリット③業務効率の悪化
配線の状況が不明確であると、ネットワーク障害や機器のトラブルが発生した際に、原因の特定や復旧作業に時間を要します。

デメリット④火災のリスク
ケーブルに溜まったホコリは、湿気などを吸収することで電気ショートを引き起こす「トラッキング現象」の原因となり、火災につながる危険性があります。

デメリット⑤機器の故障
ケーブルが踏まれたり、椅子のキャスターで轢かれたりし続けると、内部で断線し、接続されている機器の故障を招くことがあります。

一方で、配線を適切に整理することで、以下のような利点が生まれます。

快適性と印象の向上
オフィスが整然とし、従業員が快適に業務を行える環境が整います。また、来訪者に対しても良い印象を与えます。

安全な職場環境の確保
転倒事故や、ケーブルの抜けによる機器トラブルのリスクを低減し、安全性が向上します。

迅速なトラブル対応
配線系統が明確になるため、障害発生時にも原因の切り分けがしやすく、迅速な対応が可能となります。

以下に、オフィスの配線を整理するための具体的な10の方法を説明します。

① ケーブルへのタグ付け

各ケーブルに、接続先の機器名などを記したラベルを取り付けます。これにより、メンテナンスや障害発生時に、目的のケーブルを迅速に特定できます。

② ケーブル長の最適化

機器の設置場所に合わせて、ケーブルを適切な長さに調整します。余分な長さのケーブルをなくすことで、絡まりや乱雑さを防ぎます。

③ 配線モールの使用

床や壁に配線モール（ケーブルカバー）を設置し、その中にケーブルを収納します。ケーブルを保護し、つまずきを防止するとともに、見た目を整えます。

④ 配線の再構築

一度すべての配線を取り外し、現在のレイアウトに合わせて一から敷設し直します。不要なケーブルを完全に撤去し、配線経路を最適化できます。

⑤ 結束バンドでの結束

複数のケーブルを結束バンドやケーブルタイで束ねます。コンピュータの裏側やデスクの脚に沿わせることで、配線をコンパクトにまとめられます。

 

⑥ OAフロアの導入

床を二重構造にするOAフロアを設置し、その床下に配線スペースを確保します。ケーブル類を床下に収納することで、室内に露出するケーブルを大幅に削減できます。

⑦ 壁・天井裏への配線

ケーブルを壁の内部や天井裏に通します。室内の露出を最小限に抑え、空間を有効活用できます。

⑧ コンセントの増設

延長コードの多用（たこ足配線）が原因で配線が乱れている場合、壁や床にコンセントを増設することで、ケーブルの数を減らし、配線を簡素化します。

⑨ 不要なケーブルの撤去

過去に使用されていたものの、現在は使われていない不要なケーブルを特定し、撤去します。これにより、配線全体をシンプルにできます。

⑩ 無線LANの活用

インターネット接続を無線LAN（Wi-Fi）に切り替えることで、オフィス内のLANケーブルを削減します。特に、フリーアドレスのオフィスなどに有効な方法です。

オフィスの環境、現在の配線状況、予算などに応じて、これらの方法から最適なものを選択、または組み合わせて実施することが重要です。適切な配線整理を行うことで、安全で機能的なオフィス環境を構築することが可能になります。